「もういい加減質問に答えてくれると助かるんだけどね」 「答えてるじゃん簡単に分りやすく単純明解に」 恒例になりつつあるコムイからの呼び出しにきてみればいつもの騒がしいメンバーもいて溜め息をついた。神田は相変わらずであるし、フォローにまわっているリナリーが可哀相だと思わんのかあの冷血漢は。まぁそんなこんなでアレンの紳士っぷりが拝めたりぼんやりと芽生えていない恋の始まりだとか眺められていてそれなりに楽しかったりするけど、逢うたびに睨まれて殺気をむけられるのは疲れるんだよね。なんだかんだで自分も相手しちゃうから、なおさら悪い。悪循環もいいとろこなのである。 「君の場合省きすぎなんだよ」 「だって面倒」 「だからといってそんな回答ばかりじゃこっちも困るんだよねぇ」 「監視を外せない」 「うん、君なら気づいてると思ったよ」 忌々しそうに執務机によりかかり、笑顔できみの監視役にこれ以上人を使う手間も暇もないんだよねぇとコーヒーを飲むコムイをみあげた。いけしゃあしゃあとこの男は。ただのシスコン男じゃないことはわかってたけど、大概なんて腹黒い。視線を泳がせれば困ったかのように笑ってるアレンとラビとリナリーと、相変わらず睨んでる神田。あーぁもう、ギャラリー多くないかちくしょう。溜め息をひとつ。ただコムイを見上げる。空気が緊張して、顔を引き締める。 「事実を受け入れる度胸と根性はあるのか」 至極真面目に真剣にいってみたのだが、どうやらコムイたちは脱力したらしかった。一様に肩を落としたりうな垂れていたりする。 「君はもう少し真面目にしたほうがいいと思うよ・・・うん・・・」 「さん、コムイさんにこんなこといわれちゃったら終わりだと思います」 「おいこらアレン、そんなフォローにもならねぇこといってやんなさ!」 「ふ、二人とも、少し黙ってようよ、ね?」 リナリーありがとう。もう少しでぶっ潰すところでしたよ。にこりとリナリーに笑って笑い返されたリナリーの笑顔に和んでから、コムイに向き直る。質問者であるコムイより回答者である自分のほうがソファーにふんぞり返っているなんて可笑しな構図だ。 「一度しかいわない。人払いとここにいる人全員に緘口令を敷くことが前提条件」 「うんいいよ」 「もし破ったら塵と化しくれる。むしろ塵すら残さない」 こんな真面目な場面で嘘はつかない。相手もそれはわかっている、ようではあったが一応、念のため本気であることを示すために持っていたトランプを取り出した。勉強の合間に遊ぼうと、ラビからもらったものだ。それを掲げるようにして持ち、魔力をたたき起こして魔法を使う。 「このトランプがお前らとなる」 「・・・肝に、命じておくよ」 一瞬にして塵となり消失したトランプに、さすがにコムイは慄いたようだった。視線を泳がせれば各々好きな位置にいた彼らも唖然としているし、視線があえば肩を震えさせていたから本気なのはわかったことだろう。これで普通に接してくれるとありがたいがそうもいってられない。 一度、目を閉じて空気を吸い込む。ゆっくりと吐き出し、瞼を持ち上げて切り替えた。 「この世界とは違う世界から落ちてきたことは本当。そこで自分は重要なものを持っていた」 「それは?」 「神」 一言で断言した。コムイも切り替えたようで真剣な目とぶつかり合う。周りは酷く静かだ。 「前にも説明したと思うが、自分の世界じゃ魔法なんて誰でも使える」 「もちろん覚えているよ、世界の成り立ちも非常に面白かった」 「なら話は早い。私は選ばれた。世界の根源となる紋章、置き換えるならば神という言葉が当てはまるようなものに」 「基準は?」 「知らない。たまたま私だったと聞いている」 「誰でもよかったってこと?」 「そうだけどそうともいえない。たまたま、神が器にできるような人間が私だった、っていうだけ」 「ふぅん、そう。君の話は面白いね」 「それはどうも」 「だけどそんなことまで僕は聞いていないよ」 「これを説明せにゃならんから説明しただけさ」 「そうなんだ?じゃあ続けて」 一息ついて、また口を開く。 「私の中にいる神がまた反則条件の塊みたいなものでさ、下手したら世界が滅ぶのさ」 「滅ぶ?」 「文字通り世界が消滅する」 「それはまた・・・大きくでたね」 「嘘じゃないし、これは事実。私が持っている紋章の眷属でさえ少し暴走させただけで国が消滅しかけた」 「国が消えたんさ?」 「いや、地平線しか見えない草原が焼け野原になっただけですんだ。ま、その草原で生活していた一族やその他諸々の、何万人という人が一瞬で灰になったけど」 口を挟んできたラビにきちんと答えてやる。さすがに周りの視線が気になってきた。そんなこと、いう権利すらないけど。 「そんなわけで私の持ってるものは厄介かつ、複雑なものだ。そして世界すらも違う。そんな場所で教団のためにーとか、力使ってみろ。死ぬわ」 「君が?」 「お前らが」 「冗談に聞こえないねぇ」 「冗談じゃないしね」 「じゃあ笑えない、かな」 「笑えるはずもないでしょが」 「実際は?」 「私も死ぬ」 「それは困るね」 「暴走した力を制御するのは私しかいないしね。そんなわけで極力大きな力は使いたくないわけ。おわかり?」 「うーん、つまり、君の力については一切使わないことで世界が救われる、ってことでいいのかな?」 「そうそうそんな感じ。まぁ気合入れて本気ださないできちんと制御できてたら別に平気だけどさー、千年伯爵とかさー、この間会ったけど、全力でやんないと倒せないみたいだったかさー、でもそうすると世界滅ぶだろうし?千年伯爵とかも一緒に消滅するけど世界がなくなったら終わりじゃん?だからこの力は切り札とか考えずにただの超能力とでも思っといたほうがいいよってお偉いさんたちに伝えてくれないかなー、どうせお偉いさんにはもう事情話ちゃっててここに留めるようにいってきたのも自分を利用しようと考えたお偉いさんなんでしょ?ってもしもしコムイ?コムイさん?聞いてらっしゃる?」 「・・・千年伯爵に、あった?」 真面目に話すのも飽きてべらべらと適当に話していれば、皆が皆面白い顔をしていたから思わず噴出しそうになったけどさすがにかわいそうかと思って我慢した。 「け、さん」 「なにさアレン」 「ど、どこで会ったんですか?」 「この間転移していってきた日本、じゃなくていまの時代なら江戸っていうの?そこで」 面白かった顔がさらに面白くなった。さすがに我慢できなくて噴出して盛大に笑えば何故か詰め寄られた。何故。 「笑い事じゃないですよさん!!」 「アレンの言うとおりさー!!」 「いやいや慌てる意味がわかんない」 「君、よく無事だったね」 「あーまぁ、アクマっていうあの気色悪いのを?ぶっ潰したりはしたけど千年伯爵には面白がられてたからなー、これといっては別に」 「いやいやいやお前めっちゃ狙われてるじゃん!もう少しなにか思うとこないわけ?!」 「ラビもうっせぇなー。アレンの目で自分はアクマじゃないってわかってるんだから慌てることないでしょ?たかがちょっと拉致られそうになったくらい問題ないし」 「慌てるさ!問題ありすぎさ!!」 「リナリーもなにかいってください!!」 「、できたらここで生活したほうが身の安全には適してると思うけど」 「わかった。リナリーがそういうならここにとどまることにする」 「「秒殺か!!」」 俺があんだけいってもそんなこといってくれなかったくせにーとかほざいているウサギは放置しておいて、静観していたコムイに視線をむけた。 「そんなわけでやっぱりしばらく世話んなるわ」 「心強いね」 人知れず黙りこくったまま部屋をでていった神田に気づきながらも放置した。 手助けするとはいっても能力は使わずに適当に書類を片付けたり食堂の手伝いをしていたヒロイン。 (2007/11/03) |