「私、のことすきだよ」

 縁側で本を読んでいればどこからか小平太がやってきて、構ってくれといわんばかりにすり寄ってきたが読書に集中するために無視していた。それでもめげずに騒ぐものだからあーうるさい、と本を覗き込んでくる小平太の顔を押し返せばさすがに落ち込んだようで、そのときの顔がなんとも情けなく、捨てられた子犬を連想してしまいさすがにやりすぎたか、とため息をついて手招きすれば瞬時に顔を輝かせて笑顔で寄ってくるんだから可愛らしいったらありゃしない。笑えば小平太もにっこり笑った。そうこうしているうちにいつの間にか小平太の頭は私の膝の上にあり、私は読書の片手間に思いの外ふんわり柔らかい小平太の髪を弄りながらぽつりぽつりと会話するという光景ができあがった。

は?」

 柔らかい陽射しが届く昼下がり、小平太から飛び出た言葉に本から視線をはずし、下から見上げる真っ直ぐな目と視線を合わせればどこか真剣そうに問われるが、眉は情けなく八の字になっていた。口元にはやる瀬無さそうな笑み。気づいていながらも特によくも考えずにっこり笑い、答えた。

「私も小平太のことすきだな」

 目を丸くして、泣きそうに破顔した小平太の頭を撫でながら本を閉じた。気持ち良さそうにすり寄ってくる可愛い小平太に構ってあげよう。
 いまはただ、それだけで。



私たちはまだ幼く未熟だから、どうか許して。