頭をのせると直ぐに寝入ってしまったの髪を弄びながら読書を続行する。は微動だにせず、胸が上下していなければまるで死んだようだった。相当な疲労を溜め込んでいたようである。

「・・・雷蔵に三郎、はっちゃんまでなにか用事か?」

 ふと気配を感じて顔をあげて呼び掛ければからり、と閉められていた戸が開いた。雷蔵が申し訳なさそうに顔を覗かせる。

「ごめん、邪魔になるかなぁって思っ、ぅわ」
「なぁなぁ兵助!兵助も、って」
「おい、ハチ?どうした、…」

 ハチにど突かれるようにして雷蔵が部屋に転がり込み、すぱんと笑顔で勢いよく戸を開けたハチは目を丸くした。それを不審がった三郎が眉を寄せながら視線をハチから部屋へと移動させれば一瞬だけ目を丸くさせて、次の瞬間にはにやり、と笑う。なんだ一体。

「兵助もすみにおけねぇなぁ」
「ん?」
「うわ、ってば完璧熟睡してるぜ」
「あ、ハチ、頬つつくのやめなよ」

 肩に腕を回してきた三郎は相変わらずにやにや笑ってそんなことをいう。ハチはの頬をつつくがはやはり微動だにせず熟睡中だ。雷蔵がとめに入るもあまりの反応のなさに感心し始めていた。

「…起きないね」
「起きねぇな」
「動きすらしないな」
「最近忙しかったらしくて睡眠不足なんだと」

 よく意味も分からないしを覗きこんでいる三人を放置して読書に戻ろうとすれば不思議そうに三郎に問いかけられた。

「兵助、お前、どうやってここまでなつかせたんだよ」
「え?」
「うわ、何言ってんだこいつって顔してるよ」
「あはは、でもがここまで気を許してるのは兵助だけだよね」
「みんなこんなもんじゃないのか?」

 いろいろな笑みが混雑する中、逆にそう問い返してみれば一様にして三人とも固まったあと、何故だかしみじみされてしまった。意味がわからない。

「そうかそうか、自覚なしだったか」
「なにが?」
「このぶんだと兵助より鈍いも無自覚じゃねぇの?」
「たぶんそうかもしれないね」
「みんな、なんの話だ?」
「兵助にはまだ早い話、だな」



まだまだのお話