腕を回せばごき、と肩がなる。痛みに眉を寄せながら疲れたー、と欠伸をすれば兵助は顔をあげた。

「眠いのか?」
「うん」

 短く言葉を返してからまた欠伸をする。最近は実習やらなんやらでとても忙しかった。そのおかげで帰りも遅かったが、読みたい本があるし折角借りてきたのに期限切れになりそうな本を消化してしまいたかったから、睡眠時間を削って読んでいたのだ。中在家先輩に怒られたくはない。そういう諸々の理由のせいで徹夜続きだったのだ。私にとって読書とは睡眠時間を削ってまでする価値があるものであるが、それにしても今回は無理をしすぎたような気がする。実習が続かなければなぁ、とため息をついた。そんなことを友達に漏らせば呆れた顔で本中毒とまで言われてしまうし、反応に困ったものだ。まぁ数年前にいろいろと諦めたけど。しかしいい加減睡眠時間を増やさないとどこかの委員長の如く、隈が酷くなってしまう。一応女ではあるからそれは避けたいところだ。あぁでも、まだ読みたい本があるんだよなぁ。でも寝ないといけない。困った。

「ん」

 若干朦朧とする頭で思考を巡らせて、欠伸をもう一つすれば呼び掛けられた。実に分かりにくい、兵助特有の呼びかけである。一体なんだ、と視線をむければ兵助が胡座をかいた自らの太ももを叩きこちらをみている。いや、これは明らかに。

「…私眠いっつったじゃん」
「本を読んでる間ならいいぞ」
「…えぇーなにこれー」
「疲れてるんだろ?」
「あー、いや、兵助さん?」
「どうぞ?」

 男から膝枕の誘いってどうよ。ぽんぽん、と太ももを叩き続ける兵助になんとも微妙な気持ちになってしまったけど、結局睡魔に負けてしまうのは数秒後の話。



疲労+膝枕=安眠