この忍術学園では委員会に必ず所属することが義務付けられている。時期をずらして編入という形で入学した自分はまだ委員会には所属していないため、どこに入りたいか決めておけよ、と担任の先生にいわれた。原作では持ち上がりだったり話し合って決めていたはずだ。不思議に思って聞いてみれば全ての委員は埋まっているから別に希望することろでいい、というなんとも太っ腹な答えが返ってきたのだ。しかも急ぎではないしいろんな委員会に顔を出してから体験してから決めてもいいとかなんとか。どこまで太っ腹なの先生。急ぎでないのなら中々決まらないってことで最後まで引っ張ることもできるのでは、 「ただし、無所属の間は必ずどこかの委員会に顔を出すこと。これが条件だからな」 さすが忍者の先生。子供の企みなどいとも簡単に見抜いていらっしゃいました。 *** 「そうか、今日は丁度よく生物委員の活動があるが、来るか?」 「そうだね、行こうかな」 教室に戻って呼び出しはなんだったのか伊賀崎に聞かれたからありのままを話してみたら誘われたので二つ返事で行くことにした。生物委員には普通に大好きだった竹谷もいることだし好きキャラを拝めるってことは行くしかないだろう。という簡単な気持ちで決めた。のだが。 このときの迂闊さを後悔することになる。 *** 誰がこのような事態を予想できただろうか。いやできるはずがない。 「先輩!この人が毒蛇をも食べれる人ですか?」 「違うよ三治郎、切り刻むのが大好きな危ない人でしょ?」 「僕、すごい女顔した人が編入してきたとしか聞いてないけど、みんなどこからそんなこと聞いてきたんだよ」 君にも突っ込みたいが全く持ってその通りだと思うよ虎若くん。きゃあきゃあと人を囲んで騒ぐ一年生に目を丸くしてひくり、と頬を引きつらせていれば伊賀崎も呆気にとられていた。フォローしてくれよ。ジュンコが慰めてくれるように擦り寄ってきたのでなで返しておいた。優しいねジュンコ。 「…ところで、だ。三治郎」 「はい!なんですか?伊賀崎孫兵先輩」 「さっきまで何をしていた?」 「生物小屋の掃除です」 「よし、それは偉いな」 「えへへ〜」 「僕も!僕もしてましたよ!孫兵先輩!」 「なんだよ一平、僕だって!」 「ぼ、僕も…」 「そうか、みんな偉いな」 なんだこの競って僕を褒めて!っていう光景は。伊賀崎は伊賀崎で褒めながらみんなの頭を撫でてやっている。一年生たちは嬉しそうに笑いながら照れている光景は凄まじく微笑ましく可愛らしくて昇天しかけた。常々思っていたが一年生って天使だよね。座学はこれから一年生のクラスにまわしてもらえるよう頼もうか。そう真剣に考えた。 「さて、聞くがみんな。掃除中にも関わらず僕たちをみたら一目散に駆け寄ってきたのはいいが生物小屋の戸は閉めたか?」 『あ』 きれいに四つの声が重なった瞬間だった。大体委員会とはいえ仕事を放り出して一目散にかけてきたのは良くないだろうと突っ込みたい。 「孫兵の言うとおりだぞ、みんな。駆け寄るのはいいが戸締りはしっかりしてからな」 ぱたん、という音と共にそんな声が聞こえてきた。無意識にその方向へと視線を向けると群青色、というのだろうか。青紫色を纏った人が笑って小屋の前に立っていた。 『竹谷八左ヱ門先輩!!』 一年生が叫んでこんどは竹谷へと一直線に走っていく。慕われているのだろう。またもやなんとも微笑ましい光景だ。竹谷はがちん、と鍵を閉めてから駆け寄ってくる四人に笑顔を向けて迎える。そして一人一人抱き上げてみたりしてまるで近所のお兄さんみたいだ。お父さんみたいな人は用具にいるのであえてお兄さんといいたい。 「、あの人がこの委員会を取り仕切ってくれている竹谷八左ヱ門先輩だ」 「…あぁ、あの色は五年生だよね」 「そうだが…。…」 「…なに?」 「いや、その、なんだ。…あいつらが言った事は気にしなくてもいい」 「え?」 目を丸くすれば伊賀崎はなんでもないっ、とぱっと顔を逸らして委員が集まっているところへと歩いていってしまった。どうやらぼんやりとしているところを先ほどされた質問攻めにショックを受けていると勘違いしたらしい。今にも緩みそうな顔を全理性をもってして抑え込んでいただけなんだが。いや、まぁ、普通に落ち込んではいましたけどね?相当な言われようだったし。本当誰がドエムで人外だよ。毒蛇を食べたら普通に死ぬっての。大体そんなこと言いふらしたの誰だよ。 「ところで聞くが、さっきの噂話は誰から聞いたんだ?」 『鉢屋三郎先輩です!』 「挨拶もせず不躾で申し訳ありませんがその人のことよく教えてくださいませんか?」 あの野郎ぶっ殺す。 *** 笑顔で問いかけたのに伊賀崎に肩を掴まれて一年生が怖がっているからやめろといわれた。伊賀崎も伊賀崎で真剣な顔をして若干青ざめている。一年生は竹谷に抱きついて涙目になっていて、竹谷も苦笑を浮かべていた。どうやら殺気が漏れ出ているようだ。これはいけないと沸々と湧き上がる怒りを抑え込んで一言謝罪して頭を下げ、申し訳なさそうに笑みを浮かべたら一年生は警戒態勢を解いたみたいだった。まだ怯えていたけど。申し訳ないことをしたなぁ、と少し思った。 それが十数分前のことである。 「悪い、。手伝ってもらっちまって」 「いえ、今日は生物委員なので気にしないでください」 ざっくりと自己紹介を終えたら委員会活動を再開させたのだが、やはりというべきかなんというべきか。毒虫脱走が起きてしまった。なのでいまはみんなで虫取り網を手に持ち毒虫を捜索中である。自分もそれに参加しているのだが、勝手がわからないだろうと竹谷と行動を共にすることになってしまった。正直、一番の好きキャラであったから嬉しかったりもするが、それゆえにいろいろと耐えられるかどうか危ないところだと思う。心臓、持つだろうか。 「そういってくれると助かる」 「そうですか」 「ありがとな」 そんな他愛もないことを話しながら今日一日が終わった。ちなみに脱走した毒虫たちは無事捕獲できました。捕獲できたときの伊賀崎の喜びようといったら…。あとで浦風にでも話そうと思ったのはここだけの話です。 *** 「あぁ、そうだ」 「なんですか、竹谷先輩」 「俺にはいいが、そうだな…、できれば四年以下のやつらには殺気なんかぶつけるなよ?」 「…すみませんでした」 「いや、いいさ。微弱だったし思わずって感じだったしな。だけど今後気をつけろよー」 「ありがとうございます」 さすがにばれていたか。 (2009/08/08/) |