拝啓、昔の私へ。一体全体なにが起こったのかわかりませんが、死んだと思ったはずの私は何故か生きています。しかもまた、若返っているいうのだから驚きました。可笑しな話だとは思いますが、本当の話です。ついでにいうなれば、私が生きて殺戮兵器に懐かれ神に好かれていた世界とは全く違う場所にいます。情報を集める限りでは室町時代末期のようです。平成に生き、平安に生き、十九世紀あたりに生きた私が何故かまた退行し生まれ故郷の過去に生きているのです。全く持って理解不能な状況です。なので拾ってくれた老夫婦はとても良い方たちで、泣けてしまいました。日本も捨てたもんじゃないと感動したのは秘密です。昔はとてもよかったんだなぁ、と思わずにはいられませんでした。詳しくはどういえばいいのかわかりませんけど。あぁ、とにかく、どうすればいいのでしょう。

「どうかしたのかい?怪我が痛むのかい?」
「あ、大丈夫です、おばあさん」

 ぼんやりと空を眺めながら思考を飛ばしていれば、あまりにもおばあさんが心配そうに声をかけてくるもんだから咄嗟に笑顔を作って答えた。おばあさんは安心したように笑って、包帯を代えるね、と足に手を伸ばす。わかりました、と答えながら治療しやすいように体勢を変えた。優しいしわだらけの手によって包帯が解かれていく様をぼんやり眺めながら、気付かれないようにため息をついた。
 なんで。どうして。やっと成人間近を迎えていたはずの自分はまた物心ついたばかりといわんばかりの背格好になっているのだろう。誰か教えてはくれないか。

「おじいさんがいま、畑から戻ってきたらご飯にしようねぇ」
「はい、ありがとうございます」

 本当また幼児化とか。ふざけるのも大概にしてもらいたい。






(2009/05/17/)