夜が明けた。結局はこの男と一夜を共にしてしまった。 いや、ただ一緒に野宿しただけだ。うん、それだけ。

「あー、なに?俺と寝たこと後悔してるの?」
「だから誤解を招くその表現をどうにかしてください!」

 必死になって怒鳴ればシャルナークさんは笑って頭に手を置き、木の根元へと座る。 荷物の整理をしながらそれを横目で見て、舌打ちした。昨日はあのまま日が暮れ、夜に動くのも危ないだろうしということで 野宿することになった。成り行きで一緒に野宿することになり、 ひとりの方が楽だと考えていた自分はかなり渋ったが結局は丸め込まれた。シャルナークさんが火の番をするといってまたもめたが、また丸め込まれ警戒しながら寝に入ったはずだ。それなりに十分な距離をとって。

「ねー、まだ怒ってるの?たかが膝枕ぐらいで」
「たかがじゃありません!一生の不覚です!!」

 目が覚め、薄暗い空や黒い影のような木々たちよりもまず先に、この男の 笑顔を視界一杯にうつしたときは一瞬思考が停止したものだ。回復したのはおはようと話しかけられて。すぐさま飛びのいて身構えれば 猫みたいだと笑った。それにしても寝ていたとはいえ近付く気配に気付かなかったなんて、 自分もまだまだだなと思う。(たとえ相手が段違いに格上だとしても)
 ビスケにいったらどうなることやら。きっとまたあのスパルタメニュー をやらされるんだろう。そう思うと涙がでた。これは絶対にいわないでおこう。

「さて、今日はなにする?」
「もちろんプレート集めです。こうなったら手当たり次第いただいてやります」

 ただの八つ当たりだとはわかってはいたがこの苛立たしさを発散させるために 自然破壊をするわけにはいかないし、なにより自分の中で昇華させるには少しどころか 絶対に無理だ。修行している暇もない。 そうなればいまやるべきことへと無駄に集中力を注ぎ込み、 苛立たしさをやる気へと変換させるしかないのだ。自分の場合。それに早く終わればその分早くこの人と別れられる。いくら今日一日の我慢だとはいえ、 一刻も早く離れたかった。(疲れるんだよこの人といると!)

「片っ端からやります。シャルナークさんもついでに自分の分とっちゃってください」
「うん、便乗させてもらうつもりだから心配いらないって」
「心配しているつもりはありません」
「またまた、照れちゃって」
「誰がですか誰が!!」

 相変わらずの会話をしながらではあったが、数時間後には二人以外立っている者が いなくなったために試験は早めの終わりを迎えた。  
 どうやらこれで今年のハンター試験は終わりらしい。ハンター試験合格者が自分たち二人だけとか運命みたいだねーなんていうシャルナークさんには拳を見舞っておいた。