出口だと思われる扉をシャルナークさん(シャルと呼べといわれたがあえてこう呼ぶ) と左右一緒に開いた。それと同時に目をさした光が痛かった。





 きょろきょろとあたりを見渡せば人はおよそ百人前後。思ったよりは多いが四百人ほどの人数からしたら少ないほうだろう。とりあえず入り口前に突っ立っていたら邪魔になるだろうからどこか座れるところを探す。結構疲れたな、と思いながらあいていた隅のほうに、しかし全体を見渡せるようなそんなところに四肢を投げ出すように座れば隣に当然の如くシャルナークさんが座った。なんでだよ。

「・・・まだ何か」
「俺がいちゃいけない?」
「疲れてるんで休息をとりたいんです」

 ひとりで。そう言葉に含ませるが俺も疲れたし別に隣にいるくらいいいんじゃない? とかなんとかぬかしては気付かないふりをする。全く疲れていないくせによくいうよ。内心舌打ちをした。

「ぶっちゃけていえばシャルナークさんがいると休めないんですが」
「ああ、それは仕方ないね。この状況でちゃんと休めるようがんばりなよ」

 何をがんばれというんだ何を。なんだこの人、意味がわからない。口笛を吹いているシャルナークさんを怪訝そうに横目で眺めたけど、ため息をついて体の力を抜いた。何を言ってもどうせこの状況は変わらないんだろう。これ以上言葉を並べ立てても適当に返されるだけであるだろうし、横は気にせずにいることが良策だ。そう考えて、ぼんやりと、でも少しは隣を意識してでてきたところを見た。どうやらいままで地下にいたらしく、通路は斜めに地面へと吸い込まれている。しかし通ってきた道は文字通り山あり谷ありであったから、地上と地下を行き来してたんだろう。あ、いま誰か這い上がってきた。そこで大きな太鼓のような音が鳴ってシャッターが下ろされる。時間制限があったのか、と今更ながらに気付いたがこれといったかんがいを抱くわけでもなく、閉じられていくシャッターをみつめた。視界の端で一次試験の試験管と二次試験の試験管だと思われる男が話をして、一次試験の試験管がその場を去るのをとらえた。

「そろそろ始まるみたいだね」

 そういって立ち上がったシャルナークさんは手を差し出す。それを不可解だといわんばかりに眉を寄せて眺めていればため息をつかれた。なんだよ一体。シャルナークさんを見上げると同時に手をつかまれ、立たされる。あぁ、なるほど、こういうことか。納得はしてみたが、少し勢いが強すぎてシャルナークさんに抱きつく形になってしまったのはどうもいただけない。力強すぎ。腕痛い。

「痛いんですけど」
「立たせてもらっていうのはそれだけ?」
「頼んだ覚えはないんですけどね。まぁありがとうございました。満足ですか?」
「・・・いい性格してるよね、君」
「ありがとうございます」

 笑顔でいってみたらシャルナークさんが爆笑した。いやいや嫌味なのになんで。涙まで滲ませて、この人本当にわからない。

「あー、ほんと、君、面白いね」
「・・・どうも」
「でもさ、君、軽いよ、軽すぎる」

 いったいなに食べてたらこんなに軽くなるんだか。そういって不思議そうに人の腕を掴んで上に上げるシャルナークさんに自分も苦い顔しか返せなかった。

「つい最近までスパルタサバイバルメニューこなしてたし仕方ないよ」
「え、なに?」
「いえ、なんでもないです」

   シャルナークさんはなにかいいたげだったが二次試験官の声に遮られた。