とりあえず詳しい試験内容を知りたい。そう思って適当な人に話し掛けた。





 話を聞くため余裕のありそうな人を探していると中腹部まで来てしまった。 どいつもこいつも苦しそうな顔して情けない。視線を滑らせていればそんな人ばかりでため息がでてしまった。その中で見つけたつまらなさそうな顔をしたお兄さんは鼻歌でも歌いだしそうな余裕さで、こんなしょぼい奴らの中にもまともな人もいたのか、と少し思ってしまった。

「ちょっとすみません」
「ん?俺?」
「そう、そこの金髪のお兄さん」

 お兄さんは相変わらずつまらなさそうに答えた。人を避けて横に並んで、見上げる。意外と身長が高い。

「えーと、詳しい試験内容、教えてくれません?」
「なんで?」
「んー、寝てたら聞き逃しました」

 そりゃ面白い冗談だとかいってお兄さんは笑った。そりゃ冗談にも聞こえるよな、と思いつつ自分も笑ってはみたが、そこまで笑うことないだろうというくらい笑うもんだから本当です、と笑顔でいってやった。自分の不機嫌さに気付いたのか軽く謝ってはきたが、やはり笑いながらだった。なんか腹が立つ人だな。仏頂面になった。

「それで?教えてくれるんですか?」
「ん、いいよ。君、面白いから教えてあげる」

 なんだそりゃ。内心そう思いながらも教えてくれるそうなので黙って話を聞いた。 どうやら気に入られたらしくて金髪のお兄さんは始終笑っている。なんか、変な人に気に入られちゃったなような、そうでもないような。見上げるお兄さんは邪気があるんだかないんだか、よくわからない笑顔で説明してくれている。判断がつけがたい。

「要約すると、ここから脱出できたら一次試験合格ーってことだね」
「試験官、前を走ってませんでしたか?」
「先に出口に待ってるってさ」

 ふーん、と相槌をうてば前の人が転んだ。というか足を引っ掛けられる罠にはまったみたいだ。 それを飛び越えて着地すると今度は横から矢が飛んできたが避けるか掴むかして回避する。

「なんですかこれ」
「罠だよね」
「みりゃわかりますって。ていうか受けてますし」

 この会話の間にも落とし穴やら上からの落石とかいろいろな罠が襲ってきた。それは壁をつたって走ったり落石は弾くか崩すかして回避してコースに戻る。金髪のお兄さんは余裕で避けたみたいだった。この人、それなりだとは思っていたけど、ビスケ並に強いかもしれない。そう直感が訴えた。

「やるねー、君」
「いや、お兄さんほどではないですよ」
「シャルナーク」

 ひっきりなしに襲ってくる罠を避けながら同じように避けているお兄さんをみると 目があった。よそ見しているのに滑るように罠を避け怪我一つ負ってない。 やっぱりこの人強い。

「俺の名前だよ。みんなにはシャルって呼ばれてる」
「そうなんですか」
「ねぇ、君の名前も教えてよ」
「そうですねぇ」

 前を走ってたやつらが大分消えたな、と違うことを考えながらも 危機一髪の紙一重で罠を避けているのにシャルナークと名乗ったお兄さんは まだまだ余裕そうだ。なんだかちょっと悔しい。

「ただのしがない一般人です」

 だからそう答えるとお兄さんはやっぱり面白いといって笑った。


 出口まであともう少し。